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資金関連

資金調達と財務健全性の関係

  • 投稿:2024年01月08日

今回は、資金調達方法によって財務状態の健全性がどのように変わるかについてみていきたいと思います。

目次

固定長期適合比率

早速ですが「固定長期適合比率」という指標をご存じでしょうか。経営分析を行う際の経営指標の中では割とよく聞く言葉だと思います。

自分自身、受験勉強時代は、試験にでる指標として、その意味と計算式をただ暗記していました。

計算式は、「固定資産÷(固定負債+自己資本)×100%」です。

意味としては、

・固定資産が、固定負債と自己資本の合計に対してどの程度の割合を占めているか

指標の結果から判断できることは、

・その割合が100%を下回っていれば固定資産を賄っている資金状況は健全であり、100%を上回っていると資金繰りに懸念が生じる可能性がある

というものです。

試験としては、公式さえ覚えていれば数字を当てはめ回答し、それで終わりだったのですが、今実務をやっていてこの指標を意識することは、資金繰りを考えるうえで、実はかなり重要だと感じています。

今回はその理由について、考えてみたいと思います。

この式が重要となる理由とは?

重要となる理由の結論としては、資金管理を行う上で、長期運用するための資金を、長期間で調達することは重要であり、この指標はまさにそれを測る指標といえるからです。

では、なぜこの指標が100%を上回る必要があるのか。すなわち、固定資産>固定負債+自己資本、の状態である必要があるのか。

たとえば、新規ビジネスのための設備投資を行う場合、基本的には、資金を調達し、その資金で設備投資等を行い(運用)、運用して獲得した資金で、調達資金を返済するという流れになります。ここでは、借入利率以上の運用利回りが必要です。

そして、たいていの場合、新規事業を開始してもすぐにその成果がでることは稀であり、ある程度の時間を要することが一般的だと思います。

これを前提として、簡単な数値例で考えてみたいと思います。

例えば、既存事業が軌道に乗っており、新規事業を行うために設備投資を1,000万円行うとします。

これを以下のケースで考えてみたいと思います。

ケース1):自己資本1,000万円で賄う場合

ケース2):500万円を自己資本+500万円を長期の借入で賄う場合

ケース3):長期の借入で1,000万円を賄う場合

ケース4):500万円を長期の借入+500万円を短期の借入で賄う場合

ケース1)自己資本で全額賄う場合は、自己資本については返済の必要がなく、過去に累積した資金であるため、現在運転中の既存事業の日々の操業のための資金繰りとは関係なく、新規事業のためだけに使用してもよいため、新規事業に時間をかけて取り組むことができます。この場合、固定長期適合比率100%(1,000万円(設備投資)÷1,000万円(自己資本))の状況です。

ケース2)500万円を自己資本+500万円を長期の借入で賄う場合については、自己資本はケース1の通り日々の資金繰りへの影響という意味では問題なく、長期の借入もすぐに全額の返済を要求されないため、返済初期は大変な場合があっても、新規事業が徐々に軌道に乗っていけば、それに合わせて返済するということができます。そのため、日々の資金繰りへの影響はそれほど大きくないと考えられます。この場合、固定長期適合比率100%(=1,000万円(設備投資)÷(500万円(自己資本)+500万円(長期借入金)))の状況です。

ケース3も、自己資本がある場合と比較すると資金繰りを行う上で多少厳しくなりますが、それでもケース2の長期借入金部分の理由により、日々の資金繰りに大きな影響は生じないと考えられます。この状況は固定長期適合比率100%(1,000万円(設備投資)÷1,000万円(長期借入金))です。

ケース4については、1から3とは少し異なります。500万円を短期の借入で賄うと新規事業が軌道に乗り、資金が獲得できる段階になる前に返済期限が訪れる可能性があり、返済するための資金として別途500万円相当の金額を用意する必要があります。

この場合、返済資金を既存事業から一部回す必要が考えられ、通常の資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。そして、この状況は、固定長期適合比率が200%(1,000万円÷500万円(長期借入金))であり、100%を上回っている状況です。

このように、通常の資金繰りに影響を及ぼさないためには、固定長期適合比率が100%を上回らないことが必要です。

普段の生活でも資金管理を行っている

会社経営を前提に考えると少し複雑にも感じますが、私たちは日常生活でも資金の調達源泉を選別しながら日々の消費を行っていると考えられます。

例えば、長期での資金調達という意味では、車の購入や住居の購入では、過去の貯金(会社でいう利益剰余金である自己資本)で買うことや、あるいは長期のローンを組む(長期借入金)こと、あるいは実質的な借入となり利息も発生する分割での支払を行います。

また、日々の資金繰りに影響を及ぼさないという意味では、例えばちょっと高めの品物が欲しい時、毎月の収入である例えば毎月の給与から購入を行うのではなく、賞与をあてにすることや貯金を少し取り崩して、毎月の給与+貯金で購入を行い、毎月の資金繰りには影響させないことを考える場合もあると思います。

まとめ

会社も同様で、新規事業等を考え、普段とは違う長期の運用となる設備投資等を行う場合は、日々の運転資金には影響をさせない別の資金源泉が必要であり、その源泉としては長期借入金や自己資本となります。そして、その辺りのやり繰りがうまくできているかを測る指標が固定長期適合比率といえるのです。

今回の記事で見たように、日々の運転資金は短期の借入で、長期の設備投資は長期の借入や自己資本を利用することが、資金繰りを悪化させないためには重要となります。一度自社の財務状況を確認してみてもよいのではないでしょうか。

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